罪深き透明のデカダンス。東京喰種/董香-『夢乃りぃる』さん

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 『東京喰種トーキョーグール』は、石田スイ氏による日本の漫画作品です。
 彼のデビュー作として『週刊ヤングジャンプ』(集英社)にて2011年41号から2014年42号まで連載され、新編となる『東京喰種トーキョーグール:re』が、同誌2014年46号から2018年31号まで連載されました。
 また、2014年からテレビアニメ化、2015年から舞台化、2017年から実写映画化されています。

<<<公式サイト

【ストーリー】

 人間社会に紛れ込む人を喰らう正体不明の喰種(グール)が蔓延する東京。
 上井大学に通う主人公の青年、金木 研(カネキ ケン)は、女性の喰種である神代 利世(カミシロ リゼ)に襲われ瀕死となる。
 その後一命を取り留めるも、事故による手術の際に、喰種であるリゼの臓器を移植されたことで、カネキは半喰種となってしまう。
 それ以来、カネキは人間と喰種の間で、苦悩と恐怖に満ちた日々を送ることになるのだが…。

 人間社会に潜り込んだ人外の存在を描いた作品といえば、後に『メタルギアソリッド』シリーズで有名となる、当時コナミに籍を置いていたゲームデザイナー・小島秀夫氏がシナリオと企画を担当したゲーム、あの「スナッチャー」が思い出されます。

 人間を殺しその人物と入れ替わって生活している正体不明のアンドロイド「スナッチャー」と、それを追う捜査官である主人公ギリアン・シードとの戦いを描く本作は、「誰がスナッチャーなのか?」をストーリーの主軸として、その深いストーリー性と映画的演出から高い評価を得て、結果的に彼の出世作となりました。

 この東京喰種とスナッチャーの間に決定的な差があるとすれば、それはスナッチャーが純粋悪として描かれているのに対し、東京喰種は喰種側に文化や民俗、そして喰種なりの道徳と倫理を持たせ、単なる邪悪と言い切る事が出来ない、人類にとっては間違いなく敵ではあるものの、綺麗に生きる事が許されない、彼らなりの「防衛」の物語である所でしょうか。

 しかし彼らの平穏な日常を見てこちらが感情移入した瞬間、ハッと思い出します。

 「でも人間喰ってるんだよな…」と。

 あり得ない話ですがもしも自分が主人公のように突然半喰種となってしまったなら、彼と同じように悩み、葛藤し、苦悩の日々を送りながらも結局彼と同じ道を歩むかもしれないなんて、そんな想像が成立してしまうような妙なリアリティが本作にはあります。

 この現実感は、この物語が作者が頭に描いた世界観を全て表しきったものなどではなく、寧ろその妄想の大世界の一部分を切り取って描かれたからこそ覚えるような、そんな世界の広さを、懐の深さを感じてしまうのです。

 単なる勧善懲悪のお話などではない、何を以って「善」なのか判らなくなるような世界観に、人間と喰種の双方に同時に感情移入してしまいながらその深いストーリーに段々と引き込まれていってしまうのは自分だけでは無い筈です。

 この度紹介させて頂く『夢乃りぃる』さんのコスプレは、そんな東京喰種の、喰種でありながら本作のヒロインでもある『霧嶋董香(きりしまとうか)』となります。

 霧嶋董香は残虐な喰種でありながらも優しさを併せ持ち、心のどこかで人間の生活に憧れ、一人の人間として社会に溶け込もうと日々悩み、葛藤さえもする非常に複雑な存在として描かれています。

 写真に目を移すと喰種の特徴である赫子(捕食器官)、彼女の場合は左肩から生える羽赫と、彼女の本来である残酷をレタッチにより黒と赤で表現されています。

 元々イラストを描く事が好きな夢乃りぃるさん。
 ペイントツールSAIによって加えられた彼女独自の表現は、水彩画のような透明感、清涼感を感じるのと同時に退廃感も併せ持つように映り、そしてそれはそのまま作中の董香から感じる心象に通じているように思えるのです。

 素晴らしいですよね。

 東京喰種を世に送り出した石田先生の描く絵自体、カット割りやフォントの使い方が独特でありながら、どこか透き通るような美しさを持つ作品が多いイメージがあります。

 そんな石田先生の単純ではない世界観をこうして上手に表現できる彼女もまた、どこか石田先生の感性と通ずるものがあるのかもしれません。

 東京喰種という作品の特徴、石田先生の世界観、キャラの性格それらすべてを理解した上でのとても綺麗な表現。

 写真の加工だけではありません。 
 シンプルながらしっかりとしたメイク。ポーズや髪の毛の細かな質感など細部に工夫があり、彼女の作品への敬愛の念を感じます。

 血の涙を流す彼女は哀しいのでしょうか、憂えているのでしょうか。

 
 こちらは鬼滅の刃から栗花落(つゆり)カナヲ。

 当初打ち切りも囁かれた鬼滅の刃はアニメ放送をきっかけに怒涛の人気を博したのは記憶に新しい所です。
 あまりの人気急上昇に伴い単行本の発行が追い付かず、書店から単行本が消えるほどの社会現象となりました。
 多くのファンに惜しまれながら、2020年5月18日発行の週刊少年ジャンプ上で連載は終了しましたが、世の鬼滅熱は未だ冷めることがありません。

 主人公である竈門炭治郎(かまどたんじろう)の同期剣士の一人である栗花落カナヲは、彼との邂逅により彼の愚直なまでの真っ直ぐさ、懸命さに惹かれ、それまで失っていた自我に目覚め、己を取り戻していくことになります。

 普段は口数も少なくフワフワしていてミステリアスなカナヲですが、鬼を滅する剣士としての才能は天賦の才がありました。

 そして夢乃りぃるさんによるこのカナヲ。
 下級の鬼であれば涼しい顔で難なく鬼を捌く彼女が、こんなにも追い込まれ傷だらけになるということは、対峙するは恐らく上弦、ならば仇敵である「」―。

 彼女の奥義である終ノ型、彼岸朱眼を発動し見切るのは写真下部に覗く彼の血鬼術、霧氷・睡蓮菩薩でしょうか。

 不倶戴天の敵を眼前にしたカナヲの紅く鋭い眼光と、死闘を繰り広げているかのような背景や飛散した血痕。
 カナヲの想いと夢乃りぃるさんのこのシーンに掛ける想いがリンクし、こだわり抜いた演出がこの一枚に臨場感を与えています。

 もう一度鬼滅の刃を見返したくなるような、熱意を伴った彼女のイメージングが光る、そんな素敵な一枚です。

  
 夢乃りぃるさん曰く、撮影後のレタッチは勿論手間も時間も掛かるそうですが、作品になるべく忠実に、細部まで妥協せず、むしろ楽しんで作業に没頭するとの事。

 レイヤーの皆さんを紹介させて頂く度に、それぞれの各作品に対する思いや、コスに対してのこだわりを改めて強く感じる今日この頃。

 そんな皆さんの熱意を、想いを、記事を通して少しでも多くの方に知って頂けたら本望なのであります。

 さて、そんな夢乃りぃるさんもまた、他のコスプレイヤーの皆さんと繋がりたい!と表明しております!!

 この記事から更に沢山の輪が広がってくれることを願います!

  

  (このニーアも素晴らしい…)

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